本書は、筆者であるドキュメンタリー写真家の森さんが
“脚色なく”ロシアの侵攻直後のウクライナの様子を記録し、ルポとしてまとめています。
ロシアのウクライナ侵攻が開始された直後のウクライナの街の様子、
現地の方の生活、ボランティアを行う住民の思いなどが、
バイアスなく描かれていて、当時の街並みや人々の様子を感じられる貴重な資料です。
森さんが取材中、多くの訪問先で食事をご馳走してもらったそうです。
食糧、燃料が不足する戦時下という状況でも、
人との交流で感じられる温かさが残っていることはとても印象的でした。
また、ウクライナの方の中にもロシアに対する多様な考えがあり、
それが人によって異なることも本書では記載されています。
印象に残っているのは、キーウ州に住む63歳の方のロシア軍侵攻時の回想シーン
「ロシア軍が侵攻してきたとき、若いロシア兵とよく話をしていた。
彼らはロシア東部出身で親切で礼儀正しかった。
ドアをノックして反応がなければ入ることはなかったし、時々、食べ物や水、たばこをくれた。
ロシア軍が村への攻撃を行う前日、村を離れるように進言もしてくれた」
私も今年7月にウクライナに行きましたが、
ロシアに対して非常に悪い印象を持っている方もたくさんいらっしゃいました。
ただ、本書では上記のような現地の方の体験も丁寧に描かれています。
紛争の連鎖が止まらない日々ですが、
国や場所は違えど、
戦争の冷淡さと人々の温かさは共通する点が多いのではないかと感じます。
それを感じられる本書、ウクライナ支援や緊急人道支援をされる方にお勧めしたい一冊です。
「東欧ウクライナを行く: 現地ルポ2022年4〜6月」
森佑一 (著)
2024年10月11日
田島賢侍
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