亡くなった祖父に「そうか、お前は世界人になったんだな」と言われたことがある。パレスチナ・イスラエルで長期ボランティア、シリアで青年海外協力隊、フィリピンとコスタリカでの大学院留学などを経て、やっと月給がもらえる仕事についた29歳の頃だった。
祖父がどういうつもりで「世界人」と言ったのか分からない。祖父は国際協力という仕事でなぜ給与を得ることが出来るのかいまいち理解していなかったが、「世界人」には「この孫は、(自分は理解できないけど)世界の人々のために何かしていくのか」という小さな感嘆のような感情が入っていたのを覚えている。
祖父より「世界人」の称号を得てから10数年の間、アフガニスタンやスーダン・ダルフールといった紛争影響が強い場所で、厳しい状況に置かれた人の背中を押してあげたい、と思いながら仕事をしてきた。
例えば、アフガニスタン。2006年に34%だった貧困率は約10年で55%となってしまった(*1)。また、スーダンを含むサブサハラ地域は「貧困率」は減少しているものの、人口増加の影響により「貧困者数」は増加している。
世界は全体的に見れば良くなっているらしい。現に、世界全体の貧困率は下がっている。でもいつか下げ止まる。つまりそれは、アフガニスタンやスーダンのような国が取り残されるからだ。このように、貧困一つとってもSDGsが言う「誰一人取り残さない」の実現の課題となる国や地域があり、そして、そういう場所は少なからず紛争の影響を受けている。
これからも私はそういう所で仕事をしたいと思っている。そして「立派な世界人になれたよ」と、いつか胸を張って祖父に報告出来ればよいなと思う。
2020年6月17日
佐々木卓也
(*1)
“National Risk and Vulnerability Assessment 2007/2008”
https://www.unodc.org/documents/afghanistan/EUGovtofAFG_NRVA_2007-8_report.pdf
“Afghanistan Living Conditions Survey 2016-2017”
https://reliefweb.int/report/afghanistan/afghanistan-living-conditions-survey-2016-17
見たこともない景色が見られる楽しさがある
▼スーダンの空港で遭遇した巨大な砂嵐
▼アフガニスタン・バーミヤンの大仏があった跡
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